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2024年5月 5日 (日)

自然界と人との”つながり”が見えてくると世界が拡がる

20240505_2 昨日(5/4)、松木川で釣りをしていた釣り人が「みちくさ」でひと休みしてくれた。この時季は松木川でフライを楽しむ釣人が多い。以前、私が出会った釣り人からは、「両岸に木の枝が少ないからポイントへフライしやすい」と訊いた。150年経った今でもハゲ山の跡が川の両岸は岩や石がゴロゴロしているから草木が少なく釣り糸が草木に絡まらないようだ。

20240505_3 20240505_4 以前、釣り人から見せてもらったイワナは天然ものの写真だった。そこで話になったのが、川面に落ちた枯葉が川虫の餌や寝床になって生きられる。その川虫を川魚が食べている。風で飛んできた枯葉は川虫と魚とって大切な森との”つながり”であることが解った。落葉広葉樹のふるさとの苗木を植えている私たちの森づくりが川虫や川魚につながっていることを釣り人から教わった。20240505_5 苗木を植えて来年は20年を迎えるが、小さな森は雪どけや雨水を溜めて、何年もかけてろ過して松木川に流しているだろう。その水はミネラル豊富な水となって米作りの水にもなり、やがては海に流れこみ動物プランクトンが海の魚の栄養源になる。それは私たちの栄養源でもある。Dscn8183 20240505_6 自然界と人間との“つながり”が頭に浮かぶようになると、ミネラル豊富な森の水は大切にしなければならないという意識が心に沁みとおる。「みちくさ」での出会いでは、釣り人やロッククライマーの皆さんから体験したことのない世界が見えてくる。それは狭い社会で生きている自分に気付かされる場面でもある。(森びとアドバイザー・高橋佳夫)

2024年5月 4日 (土)

自然界と人との出会いは森と生きる常識を養う

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 今日も足尾ダム駐車場は満車で、路上駐車があるかもしれない。その多くが中倉山登山者の車かもしれない。登山者は、山頂からの稜線上に生きる「孤高のブナ」(私たちは「無言の語り木」と呼んでいる)に宿る木魂に耳を傾けているのかもしれない。皆さんには人と自然界の“つながり”をつかんでもらいたい。20240504 20240504_2     2013年夏と秋の調査
 先月29日、森びとプロジェクトは「中倉山のブナを元気にする恩送り」を実施した。その報告をホームページで読むと、大雨や雪解けで流される土砂を防ぐブナの根の手入れでは、樹と人との“つながり”を知った方々の常識が活動に現れている気がする。20240504_3     2013年のブナの実

 昨年11月の「ブナを元気にする恩送り」に参加した父親が今年1月に急死、その息子さんが「父の背中を追いかけたい」と思い、4月下旬の恩送りに参加してくれた。また、渡良瀬川下流に住む方は、安心・安全な生活が営めるには上流の足尾の森が元気でないといけないと、足尾での森づくりを手伝いたいと言ってくれた。銅精錬の煙害に耐え抜いて生き抜いているブナと人との出会いが、人と人との“つながり”に結びつき、森と生きる私たちの希望になっているようだ。202405042013       2013年夏のブナ
 このブナを発見したのが2012年。その年、足尾の山を知り尽くしている男性から、稜線上に「ケヤキ」が生えているという話を聞いた。標高1500㍍以上にケヤキは生きられるのかと思い、森びとスタッフ松村宗雄さんと私は中倉山に登った。結果、それはケヤキではなくブナであることを確認。翌年の夏と秋にブナの観察を行い、現在に至っている。足尾の山を知り尽くす川口市の男性に出会うことがなければ、年間何百人もの登山者が中倉山の「孤高のブナ」に会いに行くことはなかったと振り返る。

P6135129 「みちくさ」での出会いは自然界と人の心を結び付け、人は樹々に恩返しをしながら安全・安心な生活を担保できるという常識が心に育まれていく。自然界と人との大切なつながり”を極端な気象の中でみつけていきたい。(森びとアドバイザー・高橋佳夫)

2024年5月 3日 (金)

自然界と人との”つながり”を探す足尾での出会い

20240503 2011年5月、足尾・松木渓谷入口にオープンした「遊慟楽舎」(愛称名・みちくさ)。オープン目的は自然界との出会い、人との出会いである。様々な出会いから自分の狭い世界を拡げたいと願ってオープンしてから13年目。「みちくさ」の番人(舎人と呼んできた)を振り返ってみると、様々な出会いがなかったならばひとりよがり的な人生になっていたかもしれない私。20240503_2 20240503_32024050320  松木渓谷周辺の草地には鹿、猿、アナグマ、野ウサギ、ツキノワグマ等の動物の糞があちこちに落ちている。しかし、いつの間にかその糞は粉々になって草の陰で見えない。フンコロガシの仲間達が糞を分解している。糞の中には動物たちが食べた草や木々の種が混じり、フンコロガシの仲間によって地中に運ばれるか、運ぶ途中で草原に落ちる。足尾の草地にはアキグミが多く生えている。それは昆虫たちが運んだのかもしれない。秋、アキグミの実が熟すと野鳥やキツネ等の栄養源になっている。勿論、私たちが食べても美味しい。また、アキグミは光合成を行って、私たちの生存に欠かせない酸素を生産している。20240503_4  「みちくさ」での出会いがなければ自分のいのちは草木や生きものたちと“つながっている”ということすら体験できなかった。人間社会での人と人の“つなかり”、見ようとしないと見えない自然界と人との“つながり”は人間を含む生きものたちの生存の常識であることを知ることができた。20240503_5

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 今日から75歳の森びとシニアスタッフの橋倉さんがその舎人に専念している。以前から番人をしてくれたが、「みとくさ」の主になろうとしている橋倉さん。森びと次世代シニアの山田さんも次の舎人を目指している。人間の都合で壊した森を甦らせたいと願って育てている森の若葉の風に触れてみませんか。森づくりアドバイザー・高橋佳夫

2024年5月 1日 (水)

持続可能な社会に向けた風力発電の裏で

 洋上風力発電は、再生可能エネルギーの切り札として大きな注目がされています。特に、秋田県は秋田港および能代港における洋上風力発電の日本初の商業ベースでの事業とされています。また、風力発電で得た電力は、再エネ全量買い取り制度によってすべて電力会社が買取るという制度となっています。

1c60a18ef0ac4107a5518c369c64215f しかし、問題はその中身です。電力会社は、自らの資金で風力発電の電力を買取るわけではないのです。風力発電の買取り価格から石炭発電の燃料費を差引いた分を消費者が負担するという、まさに電力事業者が儲かる仕組みになっているのです。つまり、風力発電を建てれば建てるほど国民の料金負担は増え、事業者は大いに儲かる構図となっている、ひどい話しです。それでなくても庶民は、低賃金、物価高で苦しんでいる中、さらに負担を強いられいます。E420696bcde14d3aa906c185c24e158e 地球温暖化対策は急務です。これは、富める人も貧しい人も地球すべての生命に対しての危機なのですから、温暖化対策には不平等があってはならないと思います。私は、微力ながら出来る限り森の再生に携わり続けていきたいと思います。(運営委員・大山博延)

2024年4月18日 (木)

厳しい自然と向き合い森をつくり、育てる

 4月12日、環境省は2022年度の国内の温室効果ガス排出量は二酸化炭素(CO²)換算で11億3500万トン、前年度から2.5%(2900万トン)減ったと発表しました。同省によると、温室効果ガスのうちCO²の部門別排出量は、産業(工場など)3億5200万トン、(前年度比5.3%減)家庭1億5800万トン(同1.4%減)など。一方で、運輸(自動車など)は1億9200万トン(同3.9%増)で唯一増加しました。コロナ禍出控えていた旅行を再開する動きが影響したと考えられています。

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 排出量から森林などによるCO²吸収量を差し引いた正味の排出量は10億8500万トン(同2.3%減)。吸収量は前年比6.4%減の5020万トンでした。かつて整備した森林の木が老木となって吸収が鈍化しているといい、今後も減少傾向が続くとみています。(4/13毎日新聞より)

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 世界に目を向けると、世界の森林面積は1990~2020年の30年間で1億7800万ha(日本の面積の約5倍)が減少しています。(林野庁HPより)

 森林減少の原因は、農地への転用、過剰な伐採、違法伐採、森林火災など、南米、アジア、アフリカなどの熱帯林の減少が目立っています。地球上には4000万種~1億種の生物が推定され、熱帯林には地球上ではごくわずかですが、生物の5割から9割が生息していると考えられています。生命を育んでいる「生物種の宝庫」である貴重な森林が熱帯林を中心に地球上から急速に失われつつあります。(森林・林業学習館HPより)

 温室効果ガスの吸収源である森林が30年で日本の面積の約5倍も減少している。欧州や中国など植林を進めている国もありますが、苗木を植えCO²を吸収できる大きさに育つまでは数十年かかり、気候変動はさらに森林の減少を加速させます。目先の経済的利益より人類を含む生物社会の命を守ることを優先させなければなりません。私たちは、(株)古河機械金属様に植栽地をお借りして植樹をおこなっていますが、足尾の荒廃地で「木々を、森を育てる」ことの困難さを、身をもって知りました。

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 コロナ禍で足尾に来て植樹が出来ない皆さんに代わり苗木を植える「里親植樹」を行った「臼沢西の森」は、植樹地の上部はむき出しの岩が風化して亀裂が入り、落石の多い場所です。今冬は足尾も降雪日が多く、岩の隙間に入り込む水分が凍り、気温の上昇に伴って融けると岩と岩、土壌がゆるみ落石も発生します。

 4月13日に加賀スタッフと「臼沢西の森」を見に行くと、土留めの甲羅板が崩れ落ちているのが目に入りました。何が起きたのか。木々は大丈夫か!と鼓動が早くなりました。

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 現地に立つと大きな岩が支柱を倒し、獣害柵を破り、甲羅板で段々に作った植樹地を壊しながら下の獣害柵で止まっていました。幼木を見ると、刃物でスパッと切ったように食べられていました。切り口から見ると落石で壊れた獣害柵の隙間から入り込んだウサギが幼木を食べたようです。周りにはウサギのフンが落ちていました。西側、東側の獣害柵を補強した目の細かい亀甲金網には岩が包まっていました。

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  20㎝程の積雪に食べる草が覆い隠され、温暖化にブレーキをかけようと植えた苗木がウサギのエサになる。人間、ウサギ、双方の命を守るための植樹ですが、ウサギは春には芽を出すように根まで完食せず、来年の食糧を確保するために「手加減」をしてくれる。

 私たち人間は、「次はウサギに食べられないようにしよう」と獣害柵を補強しますが、自然を制御することはできません。自然と向き合いながら手入れをしてきた森には、シカやサル、イノシシ、アナグマ、時々ツキノワグマ、鳥、爬虫類、昆虫など生き物が暮らし始めました。熱帯雨林には程遠いと思いますが森の中で生き物や葉の食跡を見つけると生態系が蘇りつつあると感じます。

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 4月16日、生物の生存基盤である地球の悲鳴がまた聞こえてきました。昨年COP28が開催された中東アラブ首長国連邦の最大都市ドバイを記録的な大雨が発生し各地で浸水被害が発生しました。テレビの映像では、空港や道路、家屋が冠水している様子が映され、24時間以内に250ミリを超す大雨が観測したところもあり、年間平均雨量の2倍以上に相当する大雨となったようです。この数十年で急激な拡大を遂げたドバイは、街の大部分がコンクリートとガラスで覆われており、雨水を吸収するための緑地はほとんどないとも伝えられています。私たちは気候変動の影響が世界各地に影響を及ぼしていることを直視しなければなりません。そして、嘆いている暇はありません。

202449 4月9日松木川の増水の様子

 故・宮脇昭先生いわく「希望の明日を拓くのは他人まかせではいけない。一人一人が自分の命、愛する人の命、かけがえのない遺伝子の細い絆を守るために、木を植え本物の森をつくる。これは、いつの時代でもどこでも、人類が生き延びるための正攻法であると確信している。まず植える。植えながら議論しよう。机上の議論をいくら繰り返しても、それだけでは不十分である。実際に木を植え、いのちを育てていこう。」(いのちを守るドングリの森 集英社新書より)です。

2023629 2023年6月の臼沢西の森

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 「里親植樹」に参加された森ともの皆さん。厳しい自然の中で生きぬく木々を見に来ませんか。一緒に森を育てましょう。

(運営委員会 清水 卓)

2024年4月 1日 (月)

「脱原発」を問い直す時がやってきた

20240401 先月に開催された運営委員会では1月発生した能登半島地震に関して意見交換をし、桜井代表の意見を訊いて、私はドキッ!としました。それは、能登半島地震では志賀原発のトラブルと地域住民の避難場所や避難方法が大きな課題として私に突き付けられ、森びとプロジェクトの規約にある「原発に頼らない・・・」とする活動はどうあるべきかを改めて議論していく必要があるのではないか、と自問自答しました。

 桜井代表は、東電福島第一原発事故時は“能登地震と同じように、道路は寸断され、避難するにも行くところは制限され、住民は孤立するのではないかと思った。県外へ避難しようとした市民の受入れ抑制をかけた一部行政、避難した市民への嫌がらせ等があり、「棄民」としての扱いを感じた”(要旨)と述べました。

 原子力発電関連産業を押し進める人たちには、弱者のいのちや健康よりも目先の利益が優先され、それを支える政治があり、雇用問題と関連業界・地方行政の財政的潤い等が岩盤のようになっています。この岩盤は情緒的な怒りやあるべき論だけを語り合っていくだけでは砕けないと思います。  

    地震大国日本、地震はいつ起こるか分からない、自然界の脅威をコントロールできない私たち。そして日本の原子力発電所は能登半島のような地域に多い。その上、想定外の異常気象が世界中の人々のいのちと健康を脅かし、その猛威は年々巨大化しています。この現実から目を背けずに、いのちと健康を守ることを第一にした活動を練り上げていかなければと思います。

20240401_154249_3    私は、珠洲市の住民が原発を稼働させなかった20数年間の住民運動からそのヒントを見つけだしたいと思います。6月の第5回総会で会員の皆さんと意見交換できることを願っています。(運営委員・大野昭彦)

2024年3月23日 (土)

ほうっておく森があってもいい

私たちが植樹を指導して頂いた宮脇昭先生の「木を植えて基本的に3年後には手入れ不要」という言葉が気に入っている。最初にその話を聞いた時は、人はどうしたらその森と付き合えるのかが理解できなかったけれど、それは森を利用するという側面でしか対象を見ていなかったからだろう。

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その後にいろいろな森を見て、放置することの難しさを知った。宮脇先生が指導して作った森の場合に限っても、結局3年後(またはそのあと)に手を入れているところがそこそこあるように思う(本当に必要な場合もあるけれど)。

特定の生態系を守る重要性や、ある種の人の管理する森が大切だということは理解はしているつもりだし、人工林(経済林)の話をしているわけではないことは断っておく。

ただ、森を管理する、という名目で、ガソリンを使って木を伐って枝を落とし木を弱らせ、ガソリンを使って草を刈りゴミに出し、はたまたガソリンを使って葉っぱを吹き飛ばしていたりさえするのは本当に意味があることなのだろうか。

森が暗いから、木が細いから、健全じゃないから(健全って何?)、人が近づくと危ないから、このままじゃ役に立たないから云々。いろいろ理由はあるけれど、たいていは無駄に伐る方向に圧が働くのが常な気がしている。自然は放置しておけばその中で持続的なエコシステムを作るということは誰でも知っていることなのに。

そろそろ人間さまの価値基準の範疇から離れた「放置した森」をもう少し見直した方が良いのではないか。奥山においては当然だけれど、これからは都市部においても実はそうした森が特に重要になっていくと、私はひそかに思うのである。(運営委員 小黒)

2024年3月19日 (火)

原発回帰はあり得ない

    4月6日(土)に森びとプロジェクトと一般財団法人日本鉄道福祉事業協会の共催で「原発回帰と気候危機に向き合う生活を考える」意見交換会を開催します。

   「沸騰化」する地球環境、頻発する異常気象によって私たちの暮らしが脅かされています。今、世界の潮流は「化石燃料から再生可能エネルギー」へと転換を進めていますが、日本政府は「電力の安定供給と脱炭素化を同時に進める」ためとして「原発回帰」へと突き進んでいます。東日本大震災から13年が経ちましたが、いまだに福島第一原発の廃炉処理は進まず、帰宅困難区域への立ち入りも制限されています。また、漁業民や市民の不安を払拭されることなく、行き場のない放射能汚染水は海洋放出されています。

    そのような中、2024年1月1日に最大震度7を観測した石川県能登半島地震が発生し多くの方が被災されました。被災地では断水や停電、雪降る寒さの中での避難生活を余儀なくされています。「志賀原発」では主変圧器の絶縁油漏れや外部電源の一部停止、使用済み核燃料プールから水が溢れ、放射線モニタリングポストが故障するなど、地震の影響が明らかとなりました。また、原発事故が発生した場合の屋内退避や30キロ圏外への避難は不可能であることなど多くの問題が露呈しています。

    石川県能登半島地震の現実から、これから生きる私たちは何をしなければならないのか。被害に遭われたた珠洲市ではかつて原発の建設計画があり、計画の断念までの28年間住民が二分するほど熾烈なたたかいを反対の立場で中心で闘ってこられた住職の塚本真如(まこと)さんから当時の闘いの苦労や震災を受けて感じていることなど、私たちへビデオメッセージをいただきます。そして、長年原発問題を追求してきた科学ジャーナリスト倉澤治雄さんより問題提起をいただき、「原発回帰と気候危機」について共に考えます。

  1. ※再下部にあるYouTubeは、3月9日にTBSの報道特集で住職の塚本さんが取材を受けている動画(18分33秒あたりから)ですので、是非ご覧下さい。

(運営委員・小林敬)

                                                                     記

【開催日】2024年4月6日(土)13:30~16:00

【会 場】目黒さつきビル2F会議室、及びオンライン(Zoom)

【共 催】森びとプロジェクト、一般財団法人 日本鉄道福祉事業協会20240319_211119

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  1. 志賀原発の避難計画“絵に描いた餅” 能登半島地震 各地で道路寸断、「どこに逃げれば…」女川で募る不安、地震と原発はいま【報道特集】 | TBS NEWS DIG
    YouTube: 志賀原発の避難計画“絵に描いた餅” 能登半島地震 各地で道路寸断、「どこに逃げれば…」女川で募る不安、地震と原発はいま【報道特集】 | TBS NEWS DIG

2024年3月16日 (土)

AIは世界を楽園にするのか、破滅に導くのか

 

1 加速度的に進化しているAI。この先、人間は食べるために働く必要はなくなり、したいことだけをするユートピアが実現するのか。あるいは冒頭、人工知能同士の争いが都市間戦争に発展する手塚治虫の「火の鳥 未来編」やシュワルツネガー主演の大ヒット映画シリーズ「ターミネータ」が描くようなディストピアとなってしまうのか。

 日経新聞2月28日の「オピニオン」欄に興味深い記事が出ていた。AI研究の第一人者であり「深層学習」の基礎を築いたトロント大学名誉教授ジェフリー・ヒントン氏によれば、「AI同士が学んだことを共有しあい『集合精神』が誕生すれば、人間に対する絶大な優位性を手に入れる」といい、日経3月10日のインタヴュー記事では「AIに気候変動を止めるよう指示すれば、目的のために人類を排除する手段に出る可能性がある」「今後10年以内に自律的に人間を殺すロボット兵器が登場する」とも語っている。

 また、今年のアカデミー賞7部門を受賞した「オッペンハイマー」のクリストファー・ノーラン監督は「今一番心配しているのはAIが核ミサイルの発射ボタンを押すことだ」とインタヴューで応えていた。

 江戸から明治へと時代の大変革を体験した当時の日本の市民のように、いま私たち地球に暮らす全ての市民が時代の大変革に立ち会っているのかもしれない。できれば変化を見届けてから死にたいものだと強く思う、春には67歳となる私です。

 冒頭にあげた写真は長野県千曲市の春を彩る「あんず」の花の丘。いつもなら4月中頃かな、見ごろは。(運営委員・井上康)

2024年3月 4日 (月)

命と健康を守るアクションを求めて

Photo  千葉県FCから送信された桜とメジロ

 4月6日、「原発回帰と気候危機に向き合う生活を考える意見交換会」が開催されます。開催にあたり私は、原発回帰と気候危機に向き合いながら、この地球で健康で生きていく生活を続けていくためにはこの課題は避けて通れないと思っています。多くの方々も「自然災害が頻発・激甚化するなか、自然に対して謙虚に向き合っていくべき」、あるいは、自然界を狂暴にしているのは地球を温め過ぎている私たちの生活の問題ではないか、と感じているのではないでしょうか。

 TVニュースや新聞報道では能登半島地震の災害・被害、そして救援等をめぐって原発と気候危機に向き合ってきた政府・行政の姿勢と政策を問い、私たちにも問題提起がされていると思います。政府機関の原子力規制委員会、地震調査研究推進本部、石川県等が従来の考え方を見直す作業に入っています。20240207 銅精錬の滓体積場跡に生きるヤシャブシ

 私たちも問われている中で開催される意見交換では、“待ったなし!”とか“謙虚になるべき!”という意思表明をするだけではなく、また、政府や行政を問うだけではなく、原発回帰と気候危機に向き合う方々との出会いをどのようにつくりだすのかという意見を出し合うことが大切ではないかと思っています。今、日本社会で求められていることは出会いから連携へ、そのアクションとしての市民力ではないでしょうか。足尾町、宮城県、岩手県八幡平市、福島県南相馬市の森の樹々は私たちのアクションに期待しているのではないでしょうか。(アドバイザー・高橋佳夫)