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2025年5月15日 (木)

2025年春の山火事

    前回はこの欄で雪害の話を書いたのですが、今回は一転して山火事についてです。

    国内では岩手県大船渡市で2月末に発生した山火事が記憶に新しいところです。これは平成以降日本で発生した最大規模のものともいわれ、焼失面積は2,900ヘクタール。数多くの現住家屋が焼失し、一人の方がなくなりました。大船渡市では、この前後にもいくつかの火災があり、他にも日本各地で発生しました。

    さらに激しいのが、1月に米国ロサンゼルス地域で発生した山火事で、その焼失面積は約16,200ヘクタール。15万人以上が避難し、この中にはドジャースの大谷選手もいたことから、日本でも大きく報道されました。この災害では24人の方がなくなっています。被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申し上げます。Screenshot_20250515_184204_word

今年の山火事予防のポスター

 

    山火事の原因はいろいろ言われますが、その多くは人為によるものです。最近ではごみの焼却、野焼き、キャンプの焚火などが主な原因になっています。乾燥し風の強い時期、例えば北国の春の雪解け時期などには細心の注意を払う必要があります。

    国有林の職員として働いていたとき、特に北海道などでは5月の連休がこの山火事危険期にあたるため、休みの日も職員が分担して署に待機していました。もちろん対策は国有林だけではできません。危険期の前には自治体、消防、住民組織と連携して、地域住民へ注意喚起し、何かあれば消防、森林管理署へ連絡してくれるようお願いする会議などがありました。

    足尾の山林荒廃も、銅精錬の煙害だけでなく、繰り返し起きた山火事も原因の一つと言われ、日本一の造林地である北海道のパイロットフォレストも山火事の跡地です。

    山火事による被害は経済的、人的なものだけでなく、地域生態系も甚大な影響を被ります。そうした中、最近は地域の結びつきの希薄になっていることが気がかりです。

(運営委員・井上康)

2025年5月 1日 (木)

森づくりの原点

森づくり20周年を迎える関連で、昔のデータを漁っていたのですが、故宮脇昭先生の言葉で気に入ったフレーズを自分なりにまとめた「昭語録」なるファイルがでてきて、懐かしさとともに、今読んでも全く錆びていない先生の言葉にまた力を頂きました。

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まずは大きな奇跡の話から。

「今、自分が生きていると言うことは、生命発生以来40億年、一度も遺伝子の伝達が切られなかったと言う証明です」
「生きていることは天文学的な奇跡」
「愛する人のために今残せるもの、それは緑なのです」

つづいて森を知る方法。

「見えるものを見て、それから見えないものを見る。つまり、心で見る、現場で見る」
「目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って、調べろ」
「都市にも村にも、ふるさとの木による、ふるさとの森がある。現場を見ましょう。机の上でなく、現場、現場、現場」

そして植え方のヒミツ。

「その土地のホンモノの木は、厳しさに耐えて長生きします」
「植物は混植、密植が自然。好きな物だけを集めない。混ぜる、混ぜる、混ぜる。混ぜた中から本物が育つ」
「最高条件は、やがて自身を滅ぼす。最適条件がいいのです」

最後は矜持。

「木は自ら育つことに生命をかけています。私も森を育てることに生命をかけています」
「木は根で勝負。人は腰が勝負。だから、歩く、歩く、歩く」
「本気になって出来ないことは無い」
「人類に、最低限のユリカゴとして、本物の森を残したい」

出典も明らかではないので、もしかしたら間違って記録しているものもあるかもしれません。そしてもっとたくさんの紹介したい言葉がありますが、今日のところはあと少しでお終いにします。

「一番難しい荒廃地である足尾・臼沢の森づくりができれば、どこでも森は作れる!」

あの当時、折に触れて「足尾から世界へ」(どこでも〇〇から世界へ!とおっしゃっていましたけれども笑)と言っていたその言葉通り、今では先生の植え方による植樹方法は世界中で評価され実践されています。

「では君は何をやっているんだ?それが正しと思うなら、それをやりなさい」

辿るべき森づくりの原点はこの辺りにあるのかもしれません。(運営委員 小黒)