物流で暮らしを支える労組員が温室効果ガスを吸収する森づくりに汗を流す
11月11日から国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)がアゼルバイジャンで開催されました。伝えられるニュースを聞くと、地球温暖化・気候変動に歯止めがかけられるのかと危機感を覚えます。
世界気象機関(WMO)は2024年1月~9月の世界平均気温を巡り、産業革命前の水準と比べて上昇幅が1.54℃を超え、今年の平均気温は観測史上最も高くなる見込みだとの分析を発表しました。そして、世界のリーダーが一堂に会して生物生存の危機をいかに防ぐかを議論しなければならないCOP29の首脳級会合に、二酸化炭素排出量1位から5位の中国、アメリカ、インド、ロシア、そして、日本が不参加という現実です。2025年以降の途上国支援の資金規模の目標や出し手の範囲などに合意できるかが焦点とされていますが、温室効果ガス排出削減と同時に、吸収源の森を回復・元気にさせる議論にも注目しなければなりません。
日本の物流を担い人々の暮らしを支えるJR貨物労組の皆さんが、地球温暖化の進行に危機感を持ち、2009年から足尾松木郷「臼沢の森」で植樹・育樹活動を行っています。
「貨物労組の森」と名付け愛着を持って草刈りや森の観察をしていますが、臼沢の中腹東側にある急斜面の植樹地は木々が葉を落とす冬場は上部からの見晴らしがよく、ウサギやシカの食害にあっていました。毎冬、植樹地を囲う獣害柵の点検・補修をしていますが、補植した幼木の糖分を含んだ芽は動物たちの絶好の餌として狙われ、木々の生長が阻まれてきました。大きく育ったミズナラもクマ棚がつくられ、「どんぐりの実」を食べる際に枝が折られてしまいました。
植樹地周りの獣害柵だけでは木々を守れないことから、貨物労組の皆さんが今年5月に幼木1本1本を食害防止ネットで囲い、11月1日に草刈りを行いました。食害防止ネットで守られた幼木は枝を伸ばし、光を吸収していました。木々の生長は急斜面を登る苦労も草刈りの疲れも忘れさせ、荒廃地の森づくりの厳しさを学んだ組合員の皆さんは「貨物労組の森」を本当の「森」にしたいという熱意と喜びに変えてくれたようです。
11月1日の育樹作業に参加された組合員から届いた感想を紹介させていただきます。
≪いのちの森づくり≫ JR貨物労組 Nさん
私が足尾の森づくりに参加するようになってから、初めて晴れて作業できた日でした。
貨物労組の森までは相変わらずの山登りの辛さでしたが、今回は休憩を取ったり自分のペースで登ったりという事を意識したので、前回よりは疲れずに登れました。
草刈りは森びとの方々が下の方を刈っていただいていたので、頂上まで行きやすかったです。ありがとうございます。秋になり枯れている草も多く、植樹した木は幹ガードがついているので、ガシガシと草刈りが進んでやりがいがありました。自分が作業した前後で写真を撮りましたが、ボーボーに生えていた植樹地が、真っ平らになって気持ち良かったです。また、幹ガードを付けた苗木がグングン伸びていて生長しているのを感じました。これから寒くなりますが、クマが入ってきて幹ガードを壊したりしないことを祈ります。
民集の杜の散策では苔のふかふかが気持ち良かったです。暖かくて桜が咲いてしまっていたのは温暖化を身近に感じました。そして、森を見ると貨物労組の森はまだまだ補植しないと「森」には程遠いなと思いました。
10月14日に明治神宮外苑の「いちょう並木」の観察に家族と行ってきました。老朽化しているスポーツ施設を再構築するのは良いですが、沢山ある木々が伐採されてオフィスビルなどが建つのは違うと思います。緑が今の25%から30%に増えると言っていますが、あくまでそれは完成した時であって、長きにわたってきちんと木々が成長していくかは不安な部分があると思います。
これからも積極的に森びとの活動に取り組んでいこうと思います。 以上
(運営委員会副代表・清水 卓)