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2025年4月 1日 (火)

森は友だちである人間性を養う活動を支えてもらいます

 3月20日(祝)、名古屋市熱田区の三五本社(ECO35)にて三五ものづくり基金と三五自然共生基金が合同で第5回助成事業助成金贈呈式が開催されました。これは昨年夏、2025年度の事業で使用するために第5回助成事業への申請を三五自然共生財団へ行い、審査対象が全て承認され、採択をしていただきました。

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 三五は、2006年に三五発祥の地である旧名古屋工場が「ECO35(エコサンゴ)」として生まれ変わることから、"三五の森づくり"がはじまり、当時社長の恒川幸三が故・宮脇昭先生の番組を見たことがきっかけだという。厳しい条件を受け入れて環境保全に取り組むという企業としての決断が恒川社長に感銘を与え、宮脇先生の研究室を訪ねて森づくりの指導をお願いしたそうです。宮脇先生からは「木を植えることは人を育てることと同じであり、本物とは厳しい環境になっても、理念をもち、ぶれないことが大切だ」と提唱され、その言葉を受けて企業としても、財団を設立しても宮脇さんの哲学を貫かれていることに、刺激をいただきました。現在でも新入社員教育の場や地域の子供たちを招いての環境教育、世界・日本各地での植樹活動が行われているそうです。

Photo三五自然共生財団パンフより

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Photo_6の2枚は三五さんの広報誌より

 恒川幸三代表理事から、2020年の財団の基金設立の経緯から始まり、「ここ数年で世の中も変化している。ものづくりではモーターからモビリティに、自然では植えるだけではなく獣害対策や育苗が大切である」「気候変動に関心をもたなくてはならない時代になっている」等の挨拶がありました。

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20250320_135617363 贈呈式の後、本社内にある「マフラーミュージアム」や「ECO35の森」の見学会を行い、財団と自然共生活動で採択を受けた4団体との意見交換が行いました。私からは、助成のカテゴリーに育樹という項目を入れて欲しいことと、植樹をしたら終わることではなく、草刈りをはじめ手入れには時間が必要であり、助成が1回(1年)だけではなく継続して採択してもらえるようにしてもらいたい」等の趣旨を述べました。

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 公益財団法人三五自然共生財団様、1年間よろしくお願い致します。(運営委員・小林敬)

2025年3月21日 (金)

気候危機に向き合う生活を考える

 2024年末から日本海側や山沿いを中心に最強の寒波が襲い大雪を降らせました。北海道帯広市では半日で120㎝の降雪があり、青森、山形、新潟、長野、福島、福井、富山、石川各県で、屋根や家の周りの雪かきを行う住民が転落や落雪に埋もれ死亡する痛ましい事故が発生しました。能登半島地震と豪雨被害を受けた被災地では豪雪による家屋の倒壊、福島県では雪崩による孤立など、命と暮らしが脅かされている状況です。

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 一方の太平洋側では、2月26日に岩手県大船渡市で山林火災が発生。油分の多いスギ・マツ林が燃え広がり、県外からの消防署の応援や自衛隊の消火活動によって発生から12日目の3月9日鎮圧状態が発表。それまでの焼失面積は市の面積の約9%にあたる約2900ヘクタールと広範囲に及び、死者1人、210棟が焼失、約4500人に避難指示が出されました。

 1日も早い暮らしの復興と「いのちの森」の再生を願うばかりです。

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(2025.3.17岩手日報より)

 地球温暖化によって海面水温が上昇し増加した水蒸気が、夏は豪雨被害をもたらし、冬は偏西風の蛇行による寒気の影響で豪雪をもたらしています。また、太平洋では降雨が極端に減り水蒸気の増加が表土の乾燥をもたらしました。大船渡市の2月の降雨量は2.5ミリと平年の41ミリを大幅に下回り、燃えだした火が強風によって延焼し大規模山林火災につながったと伝えられています。

 消火に当たった消防署員は、「消しても消してもまだ山奥に火が見える」「根っこまで炎が入り込むと根を伝ってまた別なところから炎が出る。根を切ってその木を倒して消火する必要がある」と、専用のチェーンソーで根を切って延焼を抑えていると、消火の困難さを伝えています。(3/18岩手放送)

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 林床の落ち葉が燃え広がっている印象が強かった筆者は、木々は根に水を溜めており火災の後でも新たな枝を伸ばすと思っていただけに、根を伝って火が広がるという現実にショックを受けました。

 日本各地で発生する山火事は、戦後復興の計画造林で植えられた杉、松の森が多く、土壌の乾燥ばかりでなく木の幹自体も乾燥、油分を含む落ち葉は着火材に使われるほど燃えやすい場所で発生しているようです。

 私たちが「地球温暖化にブレーキをかけよう!」と足尾の荒廃地での森づくりを開始して20年になります。銅の精錬過程で排出された亜硫酸ガスによる煙害と山火事によって木々を失った足尾銅山跡地には小さな森が育ち、シカやサル、アナグマやツキノワグマなどの動物、鳥や昆虫、ヤマユリやスミレなど森の仲間が増え、「いのちを育む森」へと生長しています。

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 生物社会の一員でしかない私たち人間は森に寄生してしか生きられない存在だという冷厳な事実を認識しなければなりません。

 森林の再生に向けて政府や林野庁、地主の皆さん、行政で話し合いが持たれると思いますが、市民の声にも耳を傾けていただき、かつて森の主役であった深根性・直根性の常緑・落葉広葉樹を植えて、その土地本来のふるさとの木による「いのちの森」を再生して欲しいと願います。

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 気候変動による異常気象が世界中に被害をもたらす中で、暮らしと命を守るために、私たちは何をなすべきか。4月20日、生活現場と労働現場からの報告をいただき、若者、農家、労働者、市民の皆さんと意見交換を行う「気候危機に向き合う生活を考えるシンポジウム」を開催し、自然界からの警告に耳を傾け考えていきます。

◇開催日:2025年4月20日(日)13:30~16:00

◇会 場:目黒さつきビル2階会議室、及び、Zoomによるオンライン形式

◇申し込み:氏名、電話番号、会場、E-mail(Zoomでの参加の場合)を記入し、FAX:03-3491-7194、または、メール:moridukuri@jigyou-kyoukai.orgまでお申し込みください。

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(運営委員:清水 卓)

 

2025年3月 1日 (土)

本気の本気で森づくりに取り組む!

 2/25、約1か月ぶりの森作業集中日に参加しました。(詳細はHPの森びとブログをご覧ください。)
 ひと月空いたのは、前回の作業日(2/9)に、足尾・松木郷も大雪に見舞われ、安全第一を優先し作業中止の判断をせざるを得なかったからです。この大雪は、南米海域がラニーニャ現象で高温になり、影響を受ける対馬海流が日本海の水温を上げ、大量の水蒸気を発生、北極からの最強寒波に冷やさ
れ、記録的な大雪をもたらしたようです。加えて、長期間の同じ地域への降雪は、夏によく発生する「線状降水帯」が冬に起きているという事です。大雪は、各地でホワイトアウトによる交通事故、鉄道の混乱、雪下ろし中の落下や雪の下敷き等、多数の事故により尊い命が奪われ、高齢世帯では生活が困窮する事態に見舞われました。

2 また、気象庁は「今夏、気温は平年より高い予想・・・『また猛暑』となる見込み」と発表しました。大雪に関連する犠牲者に加え、熱中症による死亡も想定される猛暑の再来は、特に高齢者等、社会的弱者に犠牲を強いることになります。長年、健康に留意しつつ社会に貢献されてきた方々が、雪に埋もれて人生の最後を迎えるなどあってはならない。大雪で先が見えない中、不安に苛まれながらの運転、そして事故などあってはならない。何とか、気候崩壊を克服しなければならない。 

1 森は、温室効果ガスである二酸化炭素を吸収し、人間にとって必須である酸素を供給することに加え、大雨時にダムとして機能し、土砂流出を防止し、真夏の気温を低下させ、多くの動植物の生活の場となるなど、地球環境保全機能を備えています。地球環境を維持し、激甚化する自然災害から「命」を守り、子や孫に繋いでいくためには、「森」の育成が絶対的に必要だということです。ここまで地球を危機的状況に追い込んでしまった私たち人間が、何を成すべきか。まさに20年前の先達の先見性が如何に優れていたか。スタッフが森に学び、積み上げてきた20年の森づくりが如何に正しかったか。そしてこれからの20年、森に学びながら森づくりを実践し、自立して生長していける本物の森=母なる森になるよう、一つ一つの活動を積み上げていかなければならない。身体を動かすことが好きな私は、65歳で退職後老化防止のために森づくりのお手伝いをする感覚で、森びとプロジェクトに関わろうとしていました。しかし、老化防止云々と言ったレベルで本物の森は作れないし、失礼であると思った。

3 本気の本気で森づくりに取り組み、学んだことを発信し、足尾・松木郷の森を自立的に生長できる森へ育て、「次世代の担い手」に引き継ぐべく、これからの20年を頑張らなければ、この危機は克服できない。足尾の大雪を目の当たりにし、そして運営委員2年目にして、その責任の重さを再認識させられました。まずは、自分の心に木を植えなければならない。(運営委員・田城 郁)

2025年2月19日 (水)

山(森)の権利は人が行使する!

2025023 NZのタラナキ山が人間と同等の権利を法的に有するということを当欄(2/16・「森びとオピニオン&アーカイブ」)で知った。背景には、植民地時代の政府が行った土地没収やマオリの権利侵害に対する先住民への権利と文化を尊重する政府の姿勢だと言われている。要するに、タラナキ山の自然保護とか、資源保護とかという考え方ではなく、精神的文化的な存在としての山ということらしい。2025025 先日(2/13)、『襤褸の旗』というDVDを観た。描かれていたのは、鉱毒被害に苦しむ農民と田中正造の足尾銅山操業停止を求める闘い(1900年)で、健康被害と命を守る農民の請願闘争だった。しかし、官憲の弾圧(1900年2/13)と、その後の行政の強制執行で村民は村を追い出されてしまい、操業は続いた。ちなみに、今月24日は足尾銅山が閉山(1973年)した。2025024 南半球の先住民マオリの世界観には、「真の文明は山を荒らさず 川を荒らさず 村を破らず 人を殺さるべし」(1912年6/17・田中正造の日記)という精神が貫かれているように感じた。この精神は、未来社会を生きていく次世代の心にも宿ってほしいと願っている。  (アドバイザー・高橋佳夫)

2025年2月16日 (日)

自然物の権利を考えてみる

ニュージーランドのタラナキ山は法的に人間と同等の権利が認められているのだそうだ。山などの自然にいのちを見る先住民マオリの世界観が認められたのだとか。こうした流れはまだ主流ではないけれど、インドやエクアドル、ボリビアなどといった国でも同様の例があるらしい。

R0002929伊豆の鎮守の森にあるイチイガシ

いっぽう今の日本を考えてみる。「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」をたたえる文化はあるけれど、果たしてその実はどうなのだろう。神宮外苑の杜もあれだけの反対があっても伐採は止まらない。太陽光が必要だと言えば山を削る。虫や他の生き物は邪魔だから気持ち悪いから殺せという。環境に悪いとわかっていながら農薬を大量に使い、便利だからと安いプラスチック製品を買ってしまう。そして困ったことに、ほとんどの人々が都市で生まれ育つことで、自然を軽んじる風潮がさらに進むのではないかと言われている。

ほとんどの人は善良である。すべての命は大切だと言う。でもどういうわけか、深く考えることなしに自然に優しくない選択をしてしまっている。それはたぶん、これまではそれが当たり前だったからだろう。冒頭の、山が権利を持つ、そんなことは多くの人にとって思いもよらないことに違いない。でも、樹木や花、石ころまでにも何らかの権利があるのだとしたら、そしてそのうえで新しいテクノロジーがうまく使われるのであれば、それはきっと今よりずっと良い世界になるに違いない。と思うのである。(運営委員 小黒)

2025年2月 1日 (土)

「温暖化」は止まらない

 1月19日の日経新聞1面に「集中豪雪」という言葉が出ました。集中豪雨という言葉は最近では残念ながら頻繁に見聞きしますが、集中豪雪は初めて。年末年始には青森県を中心に大雪が降り、落雪、除雪などに関連して7人の方が亡くなっています。

 日本列島の冬の降雪は、日本海の水蒸気を含んだ西風が、脊梁山脈にあたり雪を降らす仕組み。温暖化により海水温が高くなると水蒸気の量も多くなり、雪の量も増えます。

1 日経新聞1月の記事

 私の住んだことのある降雪地域は、北見、帯広、札幌、日高、山形、日光、長野の7カ所。場所ごとに特徴のある冬を過ごしました。帯広では家の中でコンセントが凍り、札幌では電信柱に車が登り、北見では2004年1月の「北見豪雪」。3日間で113㎝も積雪が増え、最深積雪は171㎝。市民生活は完全に止まりました。

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室内で凍り付くコンセント 爆発しそう

 また、山形の雪は特別で、なんといっても重たく、粘つく雪が降ります。普通、道沿いのガードレールは車がぶつかり曲がりますが、山形では支柱の間で縦に曲がります。粘る雪が解けるとき、その沈降力で引き下げられるのです。ちょっと想像しにくいでしょ。残念ながらその写真はないのですが、雪の粘りがわかる写真を。

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軒先でカールする雪 粘りが強いので軒先から滑っても落ちない

 千葉へ来てからウインタースポーツはご無沙汰していますが、スキーができなくなるとかの問題ではなく、まさに生物の生存の脅かされるのが、地球温暖化問題なのだと思います。

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1月の日経新聞記事 海の生態系はかなり危ない

(運営委員・井上康)

2025年1月15日 (水)

米・ロスの大規模山火事は他人事ではない

 米・カリフォルニア州ロサンゼルスで発生した大規模山火事は日本の山手線の内側の2倍以上の面積を焼失し、約1万棟以上が損壊しました。避難を強いられている市民は15万人を超え、被害に遭った市民の悲しみをTVで観ていると、人間の無力さと備えが如何に大切かを感じました。被害額は、約21兆~23兆円に達すると言われています。

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 山火事は「人意の問題だ!」と、報道されていますが、それは州の消防予算削減、防災用貯水池の工事計画と言われています。私は、それが気象現象との関連を踏まえた予算になっていない行政、住民の想定外の異常気象があるかもしれないという危機感の表れではないかと思います

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 今月12日、初の森作業で足尾・松木沢に入った時、町民の森ともから聞いたのは高齢の町民が火災で亡くなったという悲しい話でした。私は、「明日は我が身」かもしれないと思いました。また、火災の規模は違いますが、想定外の異常気象に対する住民の意識現状は分かりませんが、年々増える高齢化に対する行政の生活サポート、アドバイスという面等も振り返ることが私たちに求められていると感じました。

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 大気中の温室効果ガス濃度がある水準を超えると気候変動が加速する(テッピングポイント)と、言われています。ところが、世界のCO2の排出量は年間300億トンを超え、100年前の10倍になっていますが、排出量は増えるばかりです。2024年の日本の気温は2023年の平均を1.48度上回り、統計以来最も高くなりました。海面水温が高くなればなるほど大気のエネルギーは変化し、極端な気象を巻き起こします。それは年末年始の気象現象をみれば分かります。それも想定外の気象現象として現れ、「観測史上初!」等と報道されていますが、その現場では生活が脅かされているのです。

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 2025年は想定外の異常気象に向き合う一人ひとりの問題でもあり、それは行政の問題でもあり、市民の声を行政に反映させる市民力が試される年だと思います。現に、政府の「省エネや脱炭素化」は目先の経済成長を優先した政策であり、それは産業界と富裕層を優遇するための政策にみえます。黙っていると、私たちはその政策を支える納税者と消費者として動員されそうです。

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 私は、20年間育てている「松木郷の森」に寄り添い、全ての生き物たちの命を育む「母なる森」へ磨きをかけていく一年にしたいと思います。

運営委員 大野昭彦

 

2024年12月23日 (月)

できないと思っていることをやってみる

 今年の足尾・松木沢の森作業は20日が仕事納めでした。森づくりスタッフ、サポーターの皆さん、1年間の森の手入れお疲れさまでした。また、この活動を支援してくれました各団体さま、会員の皆さまにこころから感謝申し上げます。ありがとうございました。202412251 足尾の森づくりスタッフ、サポーターは年間延べ約1か月も見地に入り、土を耕し、苗木を植え、草を刈り、時には獣害に向き合ってきました。この活動は全ての生きものたちの命を守る「母なる森」へと、その希望を次世代へつなげているものです。202412252 特に、今年(2024年)は煙害や山火事で荒廃地になった地に木を植えて来年で20年を迎える松木沢に、人が森に寄り添って生きていける“松木郷”が体感・体験できる環境を整えてくれました。202412253 来年はこの森を散歩しながら、 “自然環境と人とのつながり”や“森は友だち!”ということを体感できることを楽しみにしています。202412254 世界中の人々の生存を脅かしている異常気象は今年も各国で猛威をふるい、その被害は拡大するばかりで、私たちはその猛威が過ぎ去るのを待つばかりでした。師走の寒気・寒波は乱高下しながら関西や四国などに雪を降らせています。気象専門家や学者によると、暖かく湿った水蒸気が上昇し、それが北極の極渦を分裂させ、寒気が乱高下していることが関係しているらしいのです。世界中の異常気象(大雨・猛暑・暴風・豪雪等)の猛威もそうであるように、地球の海水温度の上昇から異常気象がはじまっているようです。202412255 海水温度を下げていくにはなんとしても温室効果ガス(二酸化炭素)排出を削減しなければなりません。しかし、その排出量が多い国々の首脳は自国の経済第一路線を強力におしすすめ、削減どころではありません。このままでは私たちの生存の基盤であるエコシステムと密接に連関している様々なサイクルは衰弱し、生きものたちの生存がますます不安定になっていきそうです。202412257 足尾の森づくりの恩師である故・岸井成格さんは、生前、“現代は人間活動のパラダイムシフト期だ!”という旨のことを何度も言っていました。私は、今でもそのように思っています。2025年は、自然環境と人とのつながりを軸(自然環境に負荷をかけ過ぎない人間活動)とした社会像を描き、試行錯誤をしながら、私たちが生存していく価値観を養う体感・体験が求められていると思います。(写真上:次世代の草木の土壌づくりに励む煙害地に50年以上も生きるヤシャブシ2本)202412256 私は、20年間の森づくりで得た体感・体験を言葉に紡ぎ、それを森づくり20年後の“山と心に木を植える”活動の軸にできないかと熟慮中です。とりあえずは、2011年東日本大震災・東電フクシマ原発事故の恐ろしさ、新型コロンウイルス感染のパンデミック恐怖の体感・体験で得た生存のための心得を整理しています。来年春には森びとのシンポジウムが計画されているようですから、出席者の方々との意見交換を愉しみにしています。健やかな新年をお迎えください。
                              (森びとアドバイザー・髙橋佳夫)

2024年12月15日 (日)

私たちの暮らしに原発回帰はプラスにはならない

 先日、政府が原発を「可能な限り依存度を低減する」の言葉を削除しようしている記事を目にしました。

20241215_191118_2 先月、国民民主党の玉木代表が石破首相を訪ね、原子力発電所の稼働や建て替え、増設といった活用方法を政府の新たなエネルギー基本計画に明記するよう要請しています。言うまでもなく地震大国の日本では、今年元日に発生した能登地震において土砂崩れや海面の隆起・道路の陥没が起き、原発の立地する地域での災害時の避難の難しさが露呈し、安全面の不安は増したばかりです。9月には豪雨にも見舞われ、いまだに数万人もの人が避難を余儀なくされている中で、住民の方の不安を解消することなく、政府へのこのような要請や原発回帰への動きに怒りしか出てきません。

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 そのような中、アメリカのIT大手の間では、原発による電力を活用しようという動きが広がっているそうで、AIの利用拡大でデータセンターの電力使用量は、2023年~30年の間におよそ3倍になるとの予測もあります。日本では、JR東海の進めるリニアの消費電力は東海道新幹線の約3倍、原発3~5基分の電力が必要と言われています。

20241215_191349 さらに、経済産業省は原発の新増設を進めるため、建設費を電気料金に上乗せできるようにする制度の導入を検討していることが報じられ、私たちの生活を苦しめようとしています。

20241215_194634 果たして、便利になること=私たちの暮らしが良くなるのでしょうか。政府や企業等一部の利益がもたらされる人たちのために原発の利活用が推進されるとしか思えません。原発の利活用に舵を切るということは、原発事故によるリスクを堂々と包み隠すことなく明らかにして議論するべきです。ちなみに、福島原発での廃炉が13年でデブリの12億分の1の回収しかできていません。反省をすることなく、いつとも分からない未来へ廃炉を押し付けていく企業の責任は極めて重大です。

 最後に1つ明るいニュースですが、全国知事会で栃木県の福田富一知事は、新たな温室効果ガス削減目標をより高く設定するよう環境省に要請しました。政府は2035年度までに温室効果ガスを13年度比60%減とする方向で調整中ですが、研究者や市民団体などは75%とも80%減が必要と言っており、削減目標の引き上げのうねりを大きくしていかなければなりません。ひとたび事故が起きれば土地を汚染し、市民のいのち・暮らし・仕事を奪う原発の利活用にはNOをあげ続けていきます。(運営委員・小林敬)

2024年12月 1日 (日)

森ともの声を社会運動へ反映したいと願う

 先月、私は二人の感想文を読んで気候危機等から自分の命を守ることの危機感が薄氷のようなものであることを突きつけられました。

 その感想文は、11月3日に実施した「中倉山のブナを元気にする恩送り」というブナ保護活動でご一緒した登山ガイドのMさんと9日に行われたJREU大宮シニアの森の散策と以前植樹した地の草刈りに参加してくれたMさんからのものでした。

 ガイドのMさんは「一歩一歩自分と向き合い登っていくとそこに凛々しく立つブナが待っており、“このくらいで大変と言ってはダメだよ”と、まるで“人生の師”のような圧倒的なブナに逢う事が出来ました」(一部)と感想を書いていました。シニア会のMさんは「今、我々が行動しなければ手遅れになる。子や孫たちが気付いた時では間に合わない。現状に危機感を持っていない自分に気づかされた」「自分に出来ることを考え、危機意識を共有する場をつくる」と書いていました。その後、登山ガイドのMさんは、今後は中倉山を案内したいと言ってくれました。

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 東京郊外に住む私は、気候危機という生存の不安定な社会を前にして、LED電球の交換、あるいは中倉山のブナの種から苗を育てるという程度のものでした。私は、二人の感想文を読み返し、2024年の世界平均気温が過去最高を示すと言われている中で、次期米大統領の「燃やせ!燃やせ!」に現われている温暖化姿勢、COP29での二酸化炭素大量排出国や産油国等の温暖化対策へのブレーキ踏み言動等を見聞きすると、海水温度は更に上昇するとともに気候も変化し続けると思います。世界各国の人々は年を追うごとに異常気象に怯えた生活を強いられます。

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 このような予測をすると、二人の感想は“気候危機には待ったなし!”というレベルではなく実践的であると思い、感動し、嬉しく思いました。運営委員2年目に入る私の1本の柱がふたりから提案されました。本格的に始まる「エコ散歩in足尾」では、私の生存の危機を一緒に散歩する方々と共有していきたい思います。そして、この危機感を社会へ拡げていく私たちの勇気へ繋げていきたいと考えています。

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 最後になりましたが、己の生存危機に向き合う姿勢を振り返ることの大切さに気づかせてくれた二人に感謝申し上げます。 

 運営委員  田城 郁