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2024年7月15日 (月)

天気予報と気候変動との関連づけ発信が目指される

 世界の平均気温が13ヵ月連続で過去最高を記録し、12ヵ月連続で産業革命前との比で1.5度以上を記録しました。ここ数日暑さはおさまっているものの、日本ではこの季節には災害級の暑さやゲリラ豪雨が襲っています。気温が1度上昇すると、大気中の水分が7%増えると言われており、このまま気候変動への対策をとらなければ、もっとひどい豪雨が発生することになります。世界を見ても熱波や山火事が起き、地球が沸騰している異常事態です。しかし、報道を見る限り、気候変動についてほとんど触れておらず、なぜ報道が少ないのか、それは意図的なのかを掘り下げて考えていかなければなりません。

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 そのような中、6月初旬に気象予報士や気象キャスターら44名が「日常的な気象と気候変動を関連づけた発信を加速化させよう」と声明を発表しました。声明を出すにあたり、130名からのアンケートでは、危機感は感じているものの「伝えたいのに伝えられない」「放送時間が足りない」「自分の知見が追いついていない」「メディア内の理解や協力が得られない」などの消極的な要因があるようです。

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 上記の声明にコメントを出している東京大学未来ビジョン研究センターの江守正多教授は、岩波書店『世界』8月号でも「立ち上がれ!日本の気候メディア」とエールを送っています。科学者と気象予報士や気象キャスターらが同じベクトルを向き始めました。勇気をもらった一人として何かできないか模索していきます。なお、本は読みやすい文章になっていますので、時間がありましたらお読み下さい。


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(運営委員・小林敬)

2024年7月 1日 (月)

最近の若い人は環境活動に敏感

 25年春に卒業を迎える大学生の多くは既に就職先を決めているらしい。最近の就職活動は私が学生だった45年前とは、当然大きく変わっている。

Photo そうした中、先日テレビを見ていたら、日本のZ世代の就職活動をサポートするエシカル就活サイトというのが話題になっていた。「エシカル就活」とは「企業の規模や知名度、給与ではなく、環境問題や社会問題への取り組み、自分と企業の価値観がどれだけ合致するかなどを重視した企業選びのスタイルを指す造語」だという。

 同じころ日経新聞のFINACIL TIMES翻訳記事に「気候退職」という言葉を見つけた。大企業に勤める若手会社員が勤務先の環境、特に地球温暖化対策への取組活動に不満を持ち退職することをいうらしい。また、コンサル会社の調査によれば北米や西欧では就職先を選ぶ際に、70%以上の若者が企業による環境問題への取組を重視しているとのこと。さらにこうした動きは北米や西欧よりもタイやシンガポール、マレーシア、インドネシアなど東南アジアの方が強いらしい。記事によれば企業は気候変動対策に真剣に取り組まないと若い人を採用し、つなぎ留めておくことが今後は困難になるという。

 こうした動きをみると、今は混乱し将来を悲観してしまう世界の状況だが、若い世代によって少しずつ良い方向に進むのかもしれないと、小さい希望を持つことができる。

 季節外れですが、冒頭の写真は、長野に住んでいたとき、近所の宅地造成地で見つけたチューリップ。題して「荒地に咲く希望の花」(ベタだね)。

(運営委員・井上康)

2024年6月18日 (火)

気候変動対策への国連事務総長の熱意に応えたい

20240618足尾・松木郷に踏ん張るヤシャブシ

「化石燃料業界の多くはロビー活動や法的な脅し、大量の広告キャンペーンで気候変動対策を遅らせようとする一方で、恥知らずにもグリーンウオッシュ(環境に配慮していると見せかける)を行ってきた」と強烈に業界の広告戦略を批判しているのは国連事務総長(6/17『毎日新聞』)。この記事を読んで、気候変動対策を訴え続けている事務総長の熱意にどう応えるのか。難しいことや大きなことはできないが、20年間の森づくりで学んできたことは発信できる。

 そのひとつは、私たちは森に寄り添って生きているという現実を体感することから始まると思う。例えば、「植物は光に向かって動き、植物は生涯に渡りずっと生長し続け、変化していく周囲の環境と調和し、途方もない形態をつくる。また、体内組織の水分を調整することによって体の堅さを変え、言語なしでもコミュニケーションが可能だ。その方法は化学物質を放出したり、他の生物(細菌、菌類、動物)と関係をも築く。地中では化学物質を放出して樹々の防衛機構を作動させる。菌糸と根は養分と糖分を分かち合っている」という研究結果を、森を散歩しながら体感してみることができる。

 ちなみに、樹々のパワーのひとつに人体の自然免疫力を高められることも研究済みである。森林浴の効果のひとつに、ナチュラルキラー細胞によって体内のウイルス等を退治する機能が高まるという。

参考資料:『ロボット学者、植物に学ぶ』著者バルバラ・マッツォライ、白揚社

(森びとアドバイザー・高橋佳夫)

2024年6月 1日 (土)

能登半島地震の現場を視察して

 5月11日、12日に石川県を訪問し、能登半島地震の現場を視察した。Image3 珠洲市をはじめ被災したほぼすべての市町を元県会議員北野進さんの案内で視察させていただいた。珠洲市までに行くまでに道路が各所で崩落し、片側通行を余儀なくされていた。地震、津波被害の凄まじさを目の当たりにした。地震で隆起した港、珠洲原発予定地を視察した感想として、珠洲原発を作らせないために長年に渡り多くの住民が原発建設反対の運動を粘り強く展開し原発建設断念させたことに感銘すると共に地震で隆起した原発予定地を見て原発が建設されなかったことが、能登半島全体を始め、周辺の放射能汚染を防ぐことにつながったと確信した。

Image2_1 志賀原発を視察では、サイト内の地震で被災した箇所の多いこと、原発建屋が道路のすぐそばであるのに驚いた。視察して、原発に頼らないエネルギー政策の必要性を再認識した。

(運営委員会代表・櫻井勝延)

2024年5月15日 (水)

草の根運動の先駆者から学ぶ

 森びとでは、4月6日に一般社団法人日本鉄道福祉事業協会との共催で「原発回帰と気候変動に向き合う生活を考える」意見交換会を開催しました。メインは科学ジャーナリストの倉澤治雄さんから原発総体を考える問題提起をいただくともに、今年1月1日に発生した能登半島地震で被災にあわれた塚本真如さんにビデオメッセージを受けて意見交換することでした。塚本さんのことで言えば、2月の新聞記事で1975年に珠洲市で原発建設計画が持ち上がり、2003年に建設の中止するまでの28年間の闘いを指導してこられ、今回の地震を受けて、見知らぬ人から当時の(珠洲市での)原発建設反対の闘いに感謝するメッセージが寄せられたことが掲載されていました。新聞社を通じて塚本さんを紹介していただき、話を聞くことができる機会をえました。

1715775786656 塚本さんは1月12日まで道路や携帯の電波が遮断されていた中におり、もし停止中の志賀原発が稼働していたら、海に逃げなくてはならなかったということだったのかもしれません。印象的な言葉として「日本人は(原発事故を)すぐに忘れてしまう。他人事」「はっきりとNOを言わない人が多い」「子や孫の世代に胸を張れる生き方をしなければならない」と言っていました。意見交換会での倉澤さんの写真で塚本さんの取材をされた様子が掲載されていました。3.11から13年が経ち、政府は原発を稼働させようと躍起になっています。この間の歴史を見ると、嫌らしいことに経済的に厳しい自治体の弱みに付け込んで原発の建設や核のゴミの受け入れを認めさせるやり方がまかり通っています。

 政治家や行政への批判は最もですが、同時に市民である私たちが自分たちの場でのいのちと生活を守るための運動づくりが大切であることを塚本さんたちの闘いで学ぶことができました。来月になってしまいますが、珠洲市や志賀町を訪れ、私たちに何ができるのだろうか掴んで発信したいと思います。

 最後に紹介したい本があります。桂書房さんから発刊されている『ためされた地方自治』です。是非、ご一読下さい。(運営委員・小林敬)

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2024年5月 7日 (火)

”つながり”から過去や未来をみつめる大切さ

20240507 「みちくさ」での出会いと森づくりで教えられたことは、人は森に寄り添っていかなければ生きていけないということ。「みちくさ」の建物は1902年に廃村になってしまった松木村跡地にある。銅の精錬過程で排出された煙害で農作物を育てられなくなった村びと。唯一、現金収入源であった桑の木も枯れ、養蚕が成り立たなかった。台風や大雨が降るとハゲ山から一気に雨水が松木川に流れ、洪水被害とともに下流の渡良瀬川流域の農民の生業も奪い、流域民の健康被害を強いた。来年は足尾の銅の精錬150年だが、森と人との“つながり”を衰弱させた傷跡は今でも消えることはない。20240507_2 自然界と人間との“つながり”から人間活動の歴史を振り返ると、人間が生きていくうえで超えてはならないガードラインがあるように思う。「地球環境の三重危機」(『毎日新聞』5/4社説)と向き合わなければならない私たちにとっては、エコシステムが健全に機能し、バランスがとれる範囲内の人間活動ということを基底にすえることではないかと思う。20240507_3 (森びとアドバイザー・高橋佳夫)

2024年5月 6日 (月)

自然界と人との”つながり”を健全にしたい生活を求めて

20240506 自然界と人との“つながり”、人と人との“つながり”が様々な出会いによって身心に蓄積されるとそれは生活の糧となり、人間社会や自然界と向き合う視点が拡がり、やがてそれは森に寄り添う人の知恵になっている。「みちくさ」での出会いや足尾の森づくりではその体験ができとても嬉しく思う。20240506_2    2011年の「みちくさ」

 足尾松木沢では様々な原因で鹿の死骸が見つかる。悪臭がするので人は穴を掘って死骸を埋めるが、翌日にはその穴は掘り起こされ、死骸は動かされている。この地にはツキノワグマやキツネが棲息している。鹿の死骸は肉食動物の栄養源。食べ残された部位の骨や皮は土壌分解動物たちが分解し、土へ還元してくれる。少しの間、人は我慢すればよい。20240506_3 煙害後の松木村跡の荒廃地に植えられた苗木にとっては土が改良されると有難い。元気に生長する樹々は二酸化炭素を吸収して酸素を排出してくれる。若葉は虫たちの餌にもなり、森は野鳥の子育てや寝床になる。人は、若葉の輝きや野鳥の囀りに心が癒される。20240506_420240506_5 私たちの森作業はこの“つながり”を衰弱させないように、壊さないように心掛けている。森の手入れ方法をめぐっては真剣に話し合う。スタッフを気づかいながら、優しくも厳しい意見を出し合ってきた。森びとスタッフ間の“つながり”も大切に堅持している。文献で知り得たことを体験できることは素晴らしい。(森びとアドバイザー・高橋佳夫)

2024年5月 5日 (日)

自然界と人との”つながり”が見えてくると世界が拡がる

20240505_2 昨日(5/4)、松木川で釣りをしていた釣り人が「みちくさ」でひと休みしてくれた。この時季は松木川でフライを楽しむ釣人が多い。以前、私が出会った釣り人からは、「両岸に木の枝が少ないからポイントへフライしやすい」と訊いた。150年経った今でもハゲ山の跡が川の両岸は岩や石がゴロゴロしているから草木が少なく釣り糸が草木に絡まらないようだ。

20240505_3 20240505_4 以前、釣り人から見せてもらったイワナは天然ものの写真だった。そこで話になったのが、川面に落ちた枯葉が川虫の餌や寝床になって生きられる。その川虫を川魚が食べている。風で飛んできた枯葉は川虫と魚とって大切な森との”つながり”であることが解った。落葉広葉樹のふるさとの苗木を植えている私たちの森づくりが川虫や川魚につながっていることを釣り人から教わった。20240505_5 苗木を植えて来年は20年を迎えるが、小さな森は雪どけや雨水を溜めて、何年もかけてろ過して松木川に流しているだろう。その水はミネラル豊富な水となって米作りの水にもなり、やがては海に流れこみ動物プランクトンが海の魚の栄養源になる。それは私たちの栄養源でもある。Dscn8183 20240505_6 自然界と人間との“つながり”が頭に浮かぶようになると、ミネラル豊富な森の水は大切にしなければならないという意識が心に沁みとおる。「みちくさ」での出会いでは、釣り人やロッククライマーの皆さんから体験したことのない世界が見えてくる。それは狭い社会で生きている自分に気付かされる場面でもある。(森びとアドバイザー・高橋佳夫)

2024年5月 4日 (土)

自然界と人との出会いは森と生きる常識を養う

132       2013年調査登山
 今日も足尾ダム駐車場は満車で、路上駐車があるかもしれない。その多くが中倉山登山者の車かもしれない。登山者は、山頂からの稜線上に生きる「孤高のブナ」(私たちは「無言の語り木」と呼んでいる)に宿る木魂に耳を傾けているのかもしれない。皆さんには人と自然界の“つながり”をつかんでもらいたい。20240504 20240504_2     2013年夏と秋の調査
 先月29日、森びとプロジェクトは「中倉山のブナを元気にする恩送り」を実施した。その報告をホームページで読むと、大雨や雪解けで流される土砂を防ぐブナの根の手入れでは、樹と人との“つながり”を知った方々の常識が活動に現れている気がする。20240504_3     2013年のブナの実

 昨年11月の「ブナを元気にする恩送り」に参加した父親が今年1月に急死、その息子さんが「父の背中を追いかけたい」と思い、4月下旬の恩送りに参加してくれた。また、渡良瀬川下流に住む方は、安心・安全な生活が営めるには上流の足尾の森が元気でないといけないと、足尾での森づくりを手伝いたいと言ってくれた。銅精錬の煙害に耐え抜いて生き抜いているブナと人との出会いが、人と人との“つながり”に結びつき、森と生きる私たちの希望になっているようだ。202405042013       2013年夏のブナ
 このブナを発見したのが2012年。その年、足尾の山を知り尽くしている男性から、稜線上に「ケヤキ」が生えているという話を聞いた。標高1500㍍以上にケヤキは生きられるのかと思い、森びとスタッフ松村宗雄さんと私は中倉山に登った。結果、それはケヤキではなくブナであることを確認。翌年の夏と秋にブナの観察を行い、現在に至っている。足尾の山を知り尽くす川口市の男性に出会うことがなければ、年間何百人もの登山者が中倉山の「孤高のブナ」に会いに行くことはなかったと振り返る。

P6135129 「みちくさ」での出会いは自然界と人の心を結び付け、人は樹々に恩返しをしながら安全・安心な生活を担保できるという常識が心に育まれていく。自然界と人との大切なつながり”を極端な気象の中でみつけていきたい。(森びとアドバイザー・高橋佳夫)

2024年5月 3日 (金)

自然界と人との”つながり”を探す足尾での出会い

20240503 2011年5月、足尾・松木渓谷入口にオープンした「遊慟楽舎」(愛称名・みちくさ)。オープン目的は自然界との出会い、人との出会いである。様々な出会いから自分の狭い世界を拡げたいと願ってオープンしてから13年目。「みちくさ」の番人(舎人と呼んできた)を振り返ってみると、様々な出会いがなかったならばひとりよがり的な人生になっていたかもしれない私。20240503_2 20240503_32024050320  松木渓谷周辺の草地には鹿、猿、アナグマ、野ウサギ、ツキノワグマ等の動物の糞があちこちに落ちている。しかし、いつの間にかその糞は粉々になって草の陰で見えない。フンコロガシの仲間達が糞を分解している。糞の中には動物たちが食べた草や木々の種が混じり、フンコロガシの仲間によって地中に運ばれるか、運ぶ途中で草原に落ちる。足尾の草地にはアキグミが多く生えている。それは昆虫たちが運んだのかもしれない。秋、アキグミの実が熟すと野鳥やキツネ等の栄養源になっている。勿論、私たちが食べても美味しい。また、アキグミは光合成を行って、私たちの生存に欠かせない酸素を生産している。20240503_4  「みちくさ」での出会いがなければ自分のいのちは草木や生きものたちと“つながっている”ということすら体験できなかった。人間社会での人と人の“つなかり”、見ようとしないと見えない自然界と人との“つながり”は人間を含む生きものたちの生存の常識であることを知ることができた。20240503_5

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 今日から75歳の森びとシニアスタッフの橋倉さんがその舎人に専念している。以前から番人をしてくれたが、「みとくさ」の主になろうとしている橋倉さん。森びと次世代シニアの山田さんも次の舎人を目指している。人間の都合で壊した森を甦らせたいと願って育てている森の若葉の風に触れてみませんか。森づくりアドバイザー・高橋佳夫