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2023年4月16日 (日)

加勢の“恩返し”石に名前刻む!

 先日、足尾の森作業後に参加者の皆さんと「エコ散歩in足尾」ついての話し合いをしました。

 2005年、地球温暖化に少しでもブレーキをかけたいと願う会員・ボランティアの皆さんと「臼沢」の斜面に植樹を行い、以降、緩斜面の植樹地に「松木の杜」「新松木の杜」「民集の杜」と名前をつけ森づくりを行ってきました。現在は草刈りや枝払い、獣害柵点検・修繕など育樹活動が中心となっています。会員や多くのボランティアの皆さんと育ててきた森・杜の生長を観察していただく準備を進めています。

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 緩斜面の杜の名称を「民集の杜」に統一し、各杜(北、東、西)の入り口に「民集の杜 北」「民集の杜 東」などと刻んだ石の銘板を設置することにしました。

  杜の入口に置く銘板は、緩斜面にゴロゴロと転がり草の中に露出している石を使わせていただきます。設置には山田組様の協力をいただきました。

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 松木の杜から臼沢の森を眺めると窪んだ急斜面に木々が密集し、宮脇昭先生に教えられた“混植・密植で木々が競争し我慢”、そして、楽しそうに共生する、そんな森の様子を感じました。「この荒廃地で森がつくられれば世界のどこでも森が出来る」と宮脇先生が立った地は18年経ち、芽吹く前の森ですが、風が吹けば木々がなびきハーモニーを奏でるようです。

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 緩斜面に石が堆積していますが、ミズナラやコナラ、ブナなどが足尾の山に生い茂っていた時代は地中深くに静かに佇んでいたと思います。銅の精錬のため樹木が伐られ、亜硫酸ガスや山火事によって大きな石を押さえていた森林と表土が無くなり、緩斜面に転がり落ちてきたのだろうなと草地の岩に目を向けました。

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 実際に、臼沢の森では、所どころで大きな石を木の根元で止めているのを観ることができます。この臼沢の森や民集の杜には、シカやサル、クマ、チョウやカミキリムシなど、いろんな生き物を見かけるようになりました。また、ネムノキやヤマナラシ、ヤマユリやスミレなど、植えた樹種以外の木や草花が森の仲間になっています。風や鳥、動物、アリなど、森に生きる「仲間たち」が私たちの森づくりに加勢してくれます。

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 地中に眠っていた石が今私たちの足元で風雨にさらされています。この石たちも松木村廃村の歴史を見続けてきたのではないかと想像すると、石碑に名を刻む手も震えます。

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 松木村廃村から120年、豊かな森に囲まれ、森に寄り添い生きてきた村民の“想い“を胸に、森への“恩返し”として石碑の字掘りを行います。少しぐらい失敗しても、私たちの「山と心に木を植える」森づくりの想いが観察に来た人たちに伝われば良いのではないかと思います。森に畏敬の念を持ち、石碑に名を刻むという事の意味を大事にしていきたいと願っています。

(運営委員・大野昭彦)

2023年4月 1日 (土)

雪の心配をしたかと思うと今度は雨

    2022年8月、秋田県北部を中心に総降水量が400ミリを越える大雨となりました。とくに私の隣町では、時間降水量が観測史上1位を記録し、河川の氾濫で180棟を超える甚大な被害を出しました。また、私の地域も例外ではなく、自宅近くの用水路が氾濫し1棟が床下浸水。道路は冠水し通行止めとなり、私は寝ずにその状況を見守るしかできませんでした。

Photo_2    この用水路は、2022年を含め4回氾濫をしています。その内3回は1990年代以降発生しています。2018年5月の大雨では、自宅の車庫が浸水し、掲載されている写真が2018年の車庫の浸水状況です。

2018    いずれも河川の氾濫ではなく、枝の用水路が溢れ出す「内水氾濫」が原因です。堤防2箇所も崩れ改修工事が行われました。

    そこで、昨年の氾濫後に、町役場の防災部署に河川対策につて質問をしました。町からは「現段階では抜本的なハード対策まではいっていない。防災マニュアルに沿っての対応だ」との回答を受けました。しかし、多くの町民からこの問題への解決を求め、町は「河川の底面をさらう土木工事」を県に対し要望をしました。

Photo    一歩前進ですが、一般的にこの土木工事だけでは河川の氾濫対策には不十分と言われています。今後も町内会や町行政への要望は訴え続けていきたいと思います。

 (運営委員・大山博延)

2023年3月26日 (日)

跡地を森に・・・

2月の中旬に都内にある浜離宮恩賜公園を訪れました。その日は快晴でつい一週間前の寒さが嘘のような暖かさでした。例年より早く(もう当然のような枕詞になっていますね)ウメやナノハナが咲き誇り、クスノキやトウカエデ、タブノキといった大木に癒された一日となりました。意外にも若い人が多かったのがちょっと嬉しかったです。Img_0433

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それにしても周りの高層ビル群の圧力の強さを見るにつけ、これだけの森が都内で本当によく残ったものだと思います。古くから知っている人は「こんなに背景が変わってしまったなんて」と嘆きに似た驚きの声をあげていました。

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この日は築地方面から歩いて行ったのですが、たまたま旧市場の駐車場跡地を囲うフェンスからその中を覗くことができ、その広さに驚きました。さっそく再開発で事業者募集中らしいですが、まだ作りますかね。。。似たようなものを。P2181533
ここで一つ提案。ここを森にする、というのはどうでしょう。都内にこの規模の森ができたらずいぶん素敵なことだと思うのです。隣の浜離宮とあわせてずいぶん大きな緑地になりますよね。浜離宮は庭園だからできるだけ自然に近い森がいいなぁ。できるだけたくさんの子供たちを集めて大々的な植樹祭をやりましょう。似たような「完全に不自然な荒廃」のもとを作るより、よっぽどいいと思うのですけど。気候変動の影響が急速に進む中、今やるべきは無駄な開発ではなくて、自然の多様性を保持すること、それを理解する人を増やすこと。そのためにも森はもっと身近にあってしかるべきだと思うのですが・・・。(運営委員 小黒伸也)

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2023年3月24日 (金)

今年初の森の手入れで深呼吸

1_3 約半年ぶりの足尾入り。自宅から軽自動車を4時間運転して、里の道を走り続けた。3時間半ほど走ると渡良瀬渓谷鉄道の沢入駅付近を走る。山にはヤマザクラが早い春を告げていた。その息吹を感じようと少し窓を開け、今頃に感じるなま温かい空気を吸ってみた。2 足尾町内の足尾駅近くに来ると、新聞で知った2025年オープン予定の「足尾銅山記念館」工事が行われていた。3月31日のオープンらしいので楽しみである。施工者が古河林業㈱というから、森づくりの専門家たちによる将来を生きる世代への知恵が発信されるのだろうと期待している。私の願いは、「負の遺産」を「未来への財産」へつなげてほしい。オープンまではなんとしても元気で森づくりをしていきたい。3 4 足尾ダムまでの道沿いの桜は蕾も小さい。ニセアカシヤの幹や枝が白くなっている。春の陽気が早く訪れていることもあって猿も生きるために必死だが、樹皮を食べられたアカシヤが可哀そうに思えた。 

 5 6松木沢では、「みちくさ庭」のミツマタが花の蕾を膨らませていた。間もなく黄金色に化粧してくれるだろう。7 久しぶりに鹿が歓迎してくれているようだった。車から5㍍程の近くで顔を合わせることができた。明日は久しぶりの森の手入れをする。(顧問・高橋佳夫)

2023年3月 1日 (水)

“山と心に木を植える”活動を地域に政治に

 東日本大震災から12年。毎年、世界中で災害が起こっている。2月にはトルコ、シリアでの大地震で5万人もの人々が犠牲になった。3年に渡り新型コロナウイルス感染が世界中で猛威をふるう中、世界の人口は80億人を超えた。

20200226_155015 一方、日本は少子高齢社会で人口減少に歯止めがかからない。64才以下の引きこもり人口は110万人、不登校の児童生徒は25万人となっている。毎日のように凶悪犯罪のニュースで社会不安が増している。Photo

 日本国憲法を蔑ろにし、人をモノ扱いする新自由主義政治が横行してきた結果が日本国を貧困化させてきたのだと思う。国民の生活を守るために、正規労働者を増やし、消費税を廃止することが求められていると思う。政治の責任は国民が夢や希望をもって生きられる社会をつくることだと思う。

(代表・桜井勝延)

2023年2月23日 (木)

明日は、足尾銅山が閉山して50年

 明日(2/24)、足尾銅山が閉山して半世紀を迎える。当時の銅山労働者や生活が潤っていた企業城下町の町民にとっては様々な想い出があると思う。私にとっては、1990年後半から始めた足尾の歴史を学ぶ研修から現在も続けている足尾の森づくりを数えると、足尾町にお世話になって30年ほどが経つ。Dscn0377 足尾町での想い出は語りつくせないが、私は、よく言われている負の遺産をそれとして遺すだけではなく、未来を生きる私たちの財産に遺していくことを大切にしている。Pc194146 東京都から九州地方まであると言われている長い坑道に滲みこむ水はそのまま渡良瀬川に流せない。現在も、古河機械金属㈱がその水を中和させている。水は私たちに欠かせない大切な自然の恵み。反面、大雨は濁流となって、人や家、木々や農作物を流して生活を脅かした。自然界の恵みに感謝する気持ちを忘れて亜硫酸ガスを排出してきた歴史は、命を守る循環システムの母体である森をハゲ山にした。Dscn0080  重金属が多く含んだ荒廃地を、人が手入れをすると、全ての生き物の命を守る草木が育ち、その恵みを吸収する生きもたちの社会が築かれる。何もしないと、半世紀以上経ってもヘビノネコザ等しか生えない。P1272617

 生活が潤っていたと言われている足尾町民の陰には、鉱山労働者の健康と生活を守る戦い、銅山の操業停止を求めた農民の闘い、さらには戦争政策の犠牲になった中国人や朝鮮人の苦痛の叫びがあり、その背後には富国強兵をすすめた政治家と一部経済人がいた歴史を忘れてはならない。(顧問 高橋佳夫)

2023年2月15日 (水)

「新しい林業」に働く人の未来

 昨年10月のこの欄に「新しい林業」経営モデル実証事業のことを書きました。事業の具体的なことは、林野庁のホームページを見ていただければと思いますが、この事業では、大学の研究者をはじめとする有識者に集まっていただき、新しい取組みにチャレンジする12のグループを選定し、3か年で一定の結果をまとめることになっています。

 「森びと」のページに来ている皆さんは、林業をどのような仕事だと捉えていますか?私の若いころ、林業は代表的な「3K(きつい、汚い、危険)」職場といわれ、なかなか人の来てくれない仕事といわれていました。もちろん今でも他の産業に比べて楽な仕事とはいいがたいのですが、それでもいろいろな機械化が進み、日本各地に「林業大学校」ができ、女性や若い人の参入も進んでいます。

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「ハーベスタ」という立ち木を伐採し丸太を作る機械。もちろん女性でも使えます

 モノづくりにたずさわっている人達はよく自分の作ったものが将来残っていくのがうれしいといいます。「森びと」の植林活動に参加している皆さんも、自分の植えた木が育つ喜びは十分承知のことでしょう。私自身も若いころ植林した北海道のカラマツ林で30年後に間伐作業の行われているのを見て、大きな喜びを感じたことがあります。より多くの人が、林業に携わり、こうした満足を得られるようになればいいなと思います。「新しい林業」では、これからの人たちにもっと魅力のある林業を提示することも一つの目標です。今回は「職業」としての林業のことをちょっと書いてみました。

(運営委員 井上康)

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帯広の近く浦幌町にある私有林。トドマツを主体とした針広混交の人工林

2023年1月29日 (日)

人間が蒔いた「複合被害」は私たちが刈り取る

20230129 九州地方でも水道管の凍結防止が生活上必須になってきたようです。石川県では今季の寒波襲来で1万世帯が水道の凍結・破損し、自衛隊に災害派遣を要請しました。寒波の襲来では、道路、鉄道、空港等もストップしました。このような不便で寒さに耐えなければならない生活は日常的になってきているのではないでしょうか。20230128 環境省は、「熱中症対策を温暖化軽減策の一つと位置付け」て、「気候変動適応法改正案」を今国会に提出するそうです。熱中症警戒アラートの発令時には、冷房完備の施設を開放することを市町村に義務付けるようです。20230128_2 施設の開放は当然なことですが、アラート発令時の屋外労働や教育等の対策も改正案に盛り込むことも大切なことではないかと思います。私たちの生活(経済活動とその政治)が蒔いた種が不便で怯える生活を招いているのかと思うと、その要因は私たちで刈り取るほかないと思います。202301292 誰もが経験したことのない新型コロナウイルス感染パンデミックと地球温暖化による想定外の異常気象の猛威による「複合被害」下では、私たちは自然界と人間社会の均衡を図っていく生活スタイルを実現していく通過点に立っていると思います。また、ロシアとNATO+ウクライナ支援国の戦争も対立するイデオロギーのせいにするのではなく、“地球びとの生存を守っていく”ための和平協議のスタート年にしてほしいと願っています。(顧問 高橋佳夫)

2023年1月21日 (土)

未来は掴み取るしかない

 昨年末、岸田政権は原発の運転期間を延長し、次世代原発の新増設を進めるという原発政策の大転換が決定しました。20230121_172605 昨年8月、岸田総理は脱炭素社会に向けた戦略を協議する「GX実行会議」に出席し、次世代型原発の開発や原発の運転期間延長などの検討を加速するよう指示しました。その後の具体的な議論を行なってきた経産省の有識者会議「原子力小委員会」の委員や岸田総理を議長とした「GX実行会議」の有識者は、原発推進者や利害関係者であり、完全な政府の考えを推し進めるための出来レースでしかありません。

Photo 「聞く力」をアピールしていた岸田総理。しかし、よほど疚しいのかひっそりとパブリックコメントが行われています。今後の国会で議論をされていくのかどうか不明ですが、一方の意見のみを鵜吞みにし、反対する意見を蔑ろにするやり方には納得がいきません。未だに2011年3月11日に発生した東日本大震災により原発事故は収束しておらず、苦しんでいる方々が多くいらっしゃいます。要は、このような大切な議論が国民的な議論になっていないということが問題であり、すべてにおいて現実を無視して「やっている感」「アリバイ作り」であると言わざるを得ません。

16742876342326052697529023108469 森びとでは、昨年から各県ファンクラブの皆さんと一緒に各地で「お茶会」を開催し、気候危機下での生活の備えや知恵を議論してきました。とかく狭い視野でしか生きていない私からすると、様々な方々ら様々な考えを聞き、議論をする機会は新鮮であり、学ぶことが多いと思います。

 今、欧州から輸入され、日本でも各地で行われている自治体が主催した気候市民会議も活発に行われています。参加者は「くじ引き」で無作為抽出で選ばれますが、議員のように支持者の期待を背負わない分、自由な議論を深めやすいのがメリットです。

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20230121_165716_3 私たちの未来を決める原発政策の大転換という問題を国民的な議論がされずに他人事にしていてよいのでしょうか。政治家だけに任せていてよいのでしょうか。市民でもできることを今年も模索して進めていきたいと思います。

運営委員・小林敬

2023年1月10日 (火)

大転換する原発政策、フクシマ原発事故の教訓は何処へ

 森びとプロジェクトの活動は、『地球上のすべての生命にとって欠くことのできない「いのちの森」をつくる活動(事業)を行い、地球温暖化防止に努め、有限な自然資源の価値を最大限に生かし、原発や化石燃料に頼らない人と自然の共生を目指す。この活動を通じて自然環境と人間の生命を大切にする心を育み、志を同じくするすべての人々と連携を図る。』ことを目的に活動しています。その実現のために2023年は「育樹作業と啓発活動」の両輪で取り組んでいきます。会員の皆様の一層のご理解・ご協力をお願いします。

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 昨年12月22日政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」は、再生エネネルギーや原子力など脱炭素効果の高い電源を最大限活用するとした上で、「①運転期間40年、最長60年の原則維持、停止期間の運転延長を可能にする。②廃止が決まった原発の次世代革新炉への建て替え。」などの基本方針を決定しました。

 その内容は、現在ある原発について、安全最優先で再稼働を進めることを前提に、最長60年と法律で定められている運転期間を原発が停止した期間を除き、その分を追加・延長を認め60年を超えた運転ができるようする。また、政府は昨年夏の選挙まで、原発の新設や増設、建て替えを「想定していない」と繰り返してきましたが、今回の基本方針では、次世代型の原子炉の開発・建設について「廃炉となった原発の建て替えを対象に進める」と、実質的に増設するというものです。

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 この基本方針を閣議決定し、今通常国会に提出するとしていますが、これは2011年3月の福島第1原発事故後、コントロールできない原子力は「可能な限り原発依存度を低減する」、新増設や建て替えは「想定していない」という従来の政府方針を180度転換するものです。これまで政府は、安定供給と脱炭素化の主軸は再生可能エネルギーであり、主力電源化を掲げていたことを葬り去り、原子力を使う事を意味するのではないでしょうか。

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 11年前の安全神話が崩壊した福島原発事故と多くの被災者、未だに故郷に帰れない住民の怒りはどれほどのものでしょうか。議会での審議もなく、国民への説明もないままの大転換は民主主義の根幹を危うくします。

 そもそも基本方針を決定したGX会議は、「温室効果ガスの排出原因となっている化石燃料などから脱炭素ガスや太陽光・風力発電といった再生可能エネルギーに転換して、経済社会システムの全体を見直す」など脱炭素政策を議論する場であり、原発政策を議論する場ではないのです。

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 気候変動により巨大化・頻発化する異常気象は水害や土砂崩壊を引き起こし、私たちの命と暮らしに不安を与えています。原発事故の惨禍から学んだ教訓「人間と原子力は共生できない」ことを思い起こし、将来への責任を果たす道筋を改めて考える時ではないでしょうか。

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 生存基盤である地球の「声」に耳を傾け、いのちを繋ぐ森や海、大地の豊な恵みを育み、平和で安全・安心な持続可能な暮らしやすい社会のルールや仕組みを考えるために、地域の皆さまと気候危機下の暮らしについて忌憚のない話し合い「お茶会」をつくり出していきたいと思います。

(運営委員 大野昭彦)