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2023年12月31日 (日)

森づくり活動20年目の課題

 50年前に閉山した足尾銅山の煙突から排出された亜硫酸ガスが松木川沿いを上流に流れ、そのガスで両岸の草木が枯れて土砂が川に流出した。それは、その上部の土砂や草木も崩れ落ち、後に残ったのは急斜面の岩肌(ハゲ山)だけ。F20231231 その岩に土と草木の種を混ぜた袋を張り付けて草木を発芽させ、樹々が生長できるのを待っている足尾の治山・緑化事業の今。広大なハゲ山には緑色が広くなっているが、草木の生長を加勢しているのは土壌分解動物と風や生きものたち、そして人間の手入れ。しかし、岩肌に張り付いている土は煙害前の大木に育つほどに堆積していない、ここ数年は極端な大雨等で土砂が流される。足尾の荒廃地に少しばかりの土等を混ぜて植えている樹々が煙害前の大木に育ってくれるのかと不安な年末。F20231231_2 2024年は木を植える活動をはじめて20年を迎えるが、「ふるさとの木による命をまもる森づくり」の新たな課題に挑戦する森づくりが試される。世界各地で大地と海の森をつくり、育てている皆さん!一年間お疲れさまでした。(森づくりアドバイザー・高橋佳夫)

2023年12月22日 (金)

冬至は私の心の大晦日

1695105336900 私にとっては冬至が心の大晦日。明日から太陽のエネルギーを得られる時間が長くなるので、自然界の息吹きが恵みになる可能性がスタートする日。2024年も自然界の息吹きを恵んでもらって悔いのない時間を過ごしたいと思う。1 人類の生存を脅かそうとしている温暖化にブレーキをかけられないかと願い、今年も木を植え、森の手入れをしてきた2023年。Dscn8562 その主役は80歳代から60歳代のシニアたち。足尾の80歳代から70歳代の森づくり活動は来年で20年を迎える。今年(2023年)はその志と情熱を襷に縫い込み、次世代の森びとシニアへその襷を手渡すことができる準備をしてきた。手伝ってくれた次世代シニアの皆さん、ありがとうございました。

P7091295 足尾以外の秋田県、山形県、宮城県、福島県、栃木県、千葉県、茨城県、神奈川県、東京都のシニア達は地域毎の方々との出会いの場をつくりだし、森の手入れの合間には異常気象に向き合う心得や備えを地域の方々と話し合ってきた。お疲れさまでした。P9280572 背伸びしている森びとシニア達の活動が地球温暖化にどれだけブレーキをかけられるのかは分からないが、将来世代が生きていけるエコシステム(生態系)の母体を支えていることには違いない。誰もが経験したことのない気象現象の今後は想定外の災害と被害を巻き起こすことになるのではないかと予測しなくてはならない。P7091262 森に寄り添って生きていかなければならない私たちは、温室効果ガスをこれ以上大気中に累積させない人間活動へチェンジすべきではないかと思っている。地球の70%もの海洋の海水をこれ以上温めてしまう人間活動は即、止めるべきなのですが。COP28では「化石燃料からの脱却」で合意したものの、それは「脱却の対象分野が発電などのエネルギーシステムに限定され」、締約国が化石燃料を使い続けていける余地が残っている。その上、締約国の目標は義務になっていないこともあって、締約国には抜け道がある。COP28締約国が自国ファーストである限りは「パリ協定」は実現できない。

Dsc06154   “山と心に木を植える”という合言葉で活動をスタートさせた20年前の森びとプロジェクト設立委員の議論は、「人間は生物社会の一員に過ぎないという冷厳な事実」から社会現象を思考する努力してきた。その結果、合言葉は、命を守るエコシステムの母体である森をつくろう!母体を破壊しない意識(木)を心に植えよう!となった。煙害の荒廃地にはハゲ山になる前のふるさとの木を植え、植え方は混植密植にして、時間短縮で「ふるさとの木による命の森」を育てることにした。Cimg0020 冬至の年末を迎えた私は、蟻とアブラムシの支え合いのように、森づくり20年の来年も手弁当の森の手入れと森のともだちとの出会いを楽しみたい。そして、苗を植え始めた森づくり20年の再来年には森を育ててくれた全ての方々に足尾の森を観て、触ってほしいと願っている。

P3262510今年、中倉山に植えた「孤高のブナ」の子孫

(森づくりアドバイザー・高橋佳夫)

2023年12月14日 (木)

来年4月から徴収される「森林環境税」の問題を考える

 2019年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立し、「森林環境税」及び「森林環境譲与税」が創設されました。

 森林の有する公益的機能は、温室効果ガスの削減、土砂崩れの防止、水の貯留や水質の浄化など、国民の暮らしを支えています。一方で、林業の採算性悪化、担い手不足などにより、手入れが行き届かない森林が増え大きな課題となっています。そのために令和6年度より「森林環境税(国税)」を住民税と併せ国民一人1,000円/年を徴収されます。620億円と試算されている税収は、各都道府県、自治体に配分し森林整備、人材育成、木材利用などの取り組みに活用するとしています。

Photo_2 [紅葉する臼沢の森]

 2013年から23年までの10年間「復興特別税」として、国民一人1,000円/年が徴収され、地方自治体の防災事業の財源になっていました。その税は令和6年で期限が切れるため、今回の「森林環境税」として穴埋めされ徴収されるといいます。また国は、国民からの納税がはじまるまでは、国土保全、地球温暖化防止、生物多様性の保全など森林整備が緊急課題であるとして、2019年からから1,500億円の交付金を都道府県に交付しています。しかし、その交付金は約半分が使われていないという状況です。

Photo_4  [林野庁HPより]

Photo_3  [林野庁HPより]

 世界の科学者が地球温暖化に警鐘を鳴らしてきましたが、政府や企業の温室効果ガス削減や再生可能エネルギーへの転換の遅れから、経済活動によって排出される温室効果ガスは森林や海洋が吸収できる量をはるかに超え気候変動の危機を早めているといえます。

 政府は森林整備に関し、花粉症が社会問題になっているので、「花粉症対策」として、伐採後に「花粉が少ないスギの苗」を植えるとしています。

 日本の森林をどのようにしたいのか、グランドデザインを示して、そのためにお金をこのように使うと具体的な事を示さず、現在のスギの人工林を2割程度減少させ、伐採後に花粉が少ないスギの苗を植えるという「森林環境税」の使途・考え方は抽象的で賛成できません。

Photo_5 [林野庁HPより]

 その理由は、異常気象による大雨によって土砂崩壊が発生していますが、その倒木、流木の多くが針葉樹であり、それは根の浅いことに要因があると思っています。同時に、当時の造林計画とその後の森林管理等の弱点があると思っています。よって、この税金は、国民の命を守る母体として森の多機能が発揮できる森づくりとその管理に充てるべきと思います。

Photo_6 [松木川源流のジャンダルムを望む]

Photo_10  [孤高のブナと荒廃の残る中倉山北斜面]

 花粉症対策に充てることも大切ですが、伐採コストがかかりすぎて放置されている山奥のスギを伐採して新しいスギを植えるのであれば、それは新しいスギではなく落葉広葉樹を植えるべきと思います。生態系豊かな森に育て「森のダム」となり、深い根による豪雨災害を少しでも抑制し、ミネラル豊富な水を溜めて流し、生物に欠かせない食物連鎖を健全に護っていけるようにしなければならないと思います。

Photo_9  [森びと広場・桜の花をついばむサルの群れ]

Photo_7 [スギ・ヒノキ伐採跡地に落葉広葉樹を植林した日光板橋「城山の森」(栃木県FC)]

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 このような考え方に基づいた人材育成と森の手入れ、同時に、地域での啓発活動を進めるべきではないかと思います。税金は国から地方行政へ補助されますので、納税者は各地域でその税金が国民全体の利益に結びついているのかをチェックしていかなければと思います。

(運営委員 大野昭彦)

2023年12月 1日 (金)

100年先を見据えた森づくりを学ぼう

 先日、高橋アドバイザーから動画の紹介がありました。YouTubeで東京大学ホームカミングデイ2023「新作講談 × アフタートーク:GXの先駆者、本多静六の偉業」#1というものです。下記のアドレスを、クリックしていただくとYouTubeにアクセスができます。
 
 

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 現在、東京都にある明治神宮は、都民にも都民以外にも親しまれている憩いの場となっています。故・宮脇昭先生は著書『森の力』~植物生態学者の理論と実践~では「先人たちが知恵を絞ってつくった人工の森の世界最高傑作のひとつ」、「現在の日本で最も理想的な都市公園とし機能している鎮守の森の代表格」と絶賛されています。その中で日本の林学の創始者と言われる本多静六博士が、常緑樹を植えることで、100年先を見据えて長く生き続ける明治神宮の森をつくることに尽力されました。動画では講談師の神田伊織さんが本多静六博士について語っており、#2では、昨年3月に講演をしていただいた江守正多さん(東京大学未来ビジョン研究センター教授)などがアフタートークをされています。是非、ご覧下さい。

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https://youtu.be/f9tQlP1gZCE?feature=shared

(運営委員・小林敬)