”つながり”から過去や未来をみつめる大切さ
「みちくさ」での出会いと森づくりで教えられたことは、人は森に寄り添っていかなければ生きていけないということ。「みちくさ」の建物は1902年に廃村になってしまった松木村跡地にある。銅の精錬過程で排出された煙害で農作物を育てられなくなった村びと。唯一、現金収入源であった桑の木も枯れ、養蚕が成り立たなかった。台風や大雨が降るとハゲ山から一気に雨水が松木川に流れ、洪水被害とともに下流の渡良瀬川流域の農民の生業も奪い、流域民の健康被害を強いた。来年は足尾の銅の精錬150年だが、森と人との“つながり”を衰弱させた傷跡は今でも消えることはない。 自然界と人間との“つながり”から人間活動の歴史を振り返ると、人間が生きていくうえで超えてはならないガードラインがあるように思う。「地球環境の三重危機」(『毎日新聞』5/4社説)と向き合わなければならない私たちにとっては、エコシステムが健全に機能し、バランスがとれる範囲内の人間活動ということを基底にすえることではないかと思う。 (森びとアドバイザー・高橋佳夫)
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