私が影響を受けた『マイナス成長の経済学』
前2回は私が仕事として携わっている「新しい林業」について紹介してきましたが、今回は少し趣向を変えて本の紹介をしたいと思います。私の本棚にあったのを最近再読しました。かなり古い本でして、奥付を見ると昭和62年11月30日発行。35年ほど前の本です。私自身のことをいえば友人と50ccのバイクレースに興じていたころですね(懐かしい)。著者の室田さんはこれも奥付によると一橋大学経済学部教授(数量経済分析)となっており、ウィキでみると2019年にお亡くなりになりました(合掌)。
内容は、戦後日本経済の発展をエネルギー革命(薪炭→石炭→石油→原子力)の流れと主に自給で成り立っていた地域経済の崩壊を論じた第1部、原子力発電の経済性(不経済性)を論じた第2部、エコノミクスとエコシステムとエコロジーを論じた第3部からなっています。文章は結構読みやすい。ただし、35年前のものなので、例えば国の景気を判断する指標が現在のGDPではなくGNPであったりしますが、内容が間違っているというほどの影響はないように思います。
第1部で興味を惹かれるのはやはり燃料革命と山村・林業の変化、いわゆる拡大造林(広葉樹の山をスギ、ヒノキ、カラマツへ転換)が経済的にどのような流れで行われたのか、高度経済成長の中で農産物や林産物の輸入を拡大せざるを得なかった流れなどが、わかりやすく説明されているところ。
第2部は原子力発電がどういう位置づけで日本に導入されたのかから始まります。一番驚かされたのは、火力発電では1単位の電気エネルギーをつくるのに3単位の石油エネルギーを使うのに対し、原子力発電では核分裂による熱エネルギー3単位に加え3単位の石油エネルギーが必要(ウラン235の精製や放射性廃棄物の保管を考慮すると)という試算がされていること。結局、今の福島でおきていること、フィンランドの放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」のことなどを考えると、原子力発電はものすごく不経済だという事実が明らかにされています。
第3部ではエントロピーの概念を紹介しながら、水を中心とした地球の循環システムについて解説されており、なるほどこのために地球が温暖化すると降雨が激しくなるんだなと納得しました。
若い頃に読んで、かなり影響を受けた本です。もしよろしければ先着1名の方にプレゼント(送付)します。希望される方は森びと事務所の小林あてに送付先住所氏名を明記してメールもしくは電話して下さい。ただし古い本なので、かなり寄れていますご容赦ください。
(運営委員・井上康)